シャアは生まれ持った非凡な才能(ニュータイプ)ゆえに、革命家として必要な人望を得ることができず、最終的にその目標を達成することができなかった存在だと思います。中庸を欠き、自分の才に惑わされてしまったのではないでしょうか。
それでも、人は生きていく 富野由悠季の世界<中>「ニュータイプ」とは エゴをどう超えていくのか【コラム】
理想と現実のバランス
ニュータイプであるシャアは、感応力や戦闘能力において卓越していましたが、その才能ゆえに彼の思想や行動はしばしば周囲と乖離していたように思われます。彼はジオン・ダイクンの理想を掲げつつも、父親の影響を引き継ぐことに対しても複雑な感情を抱えていました。
まるで、父マルクス・アウレリウスから帝国を受け継いだものの、グラディエーターとして戦うことに執着し、統治を軽視する一方で自らの英雄像を追い求め帝国を衰退させたコンモドゥスのようです。
バランスを備えたリーダー
一方で、ハマーンは「感応能力」「カリスマ性」「統率力」を揃えたニュータイプであり、シャアをはるかに凌駕する存在でした。シャアが理想と現実の間で揺れ動く悲劇的なキャラクターであるのに対し、ハマーンは冷静かつ戦略的にその理想を実現する力を持ったリーダーでした。
ハマーンの感応能力は非常に高く、他者の感情や考えを深く読み取る力に優れています。この能力を単なる戦闘だけでなく、政治的な駆け引きや部下の掌握に活用していた点がシャアと大きく異なります。例えば、彼女はジオン残党を取りまとめ、ネオ・ジオンのリーダーとして君臨することができました。
理想を追求しながら、組織に依存しない姿勢
シャアは一つの組織に長く留まることなく、自分の理想や目的に合致する場所を求めて渡り歩いています。ジオン軍、エゥーゴ、ネオ・ジオンなど、彼はそれぞれの組織で重要な役割を果たしましたが、最終的にはどの組織にも完全には馴染まず、自分のやりたいことを追求し続けました。
自分の才能を信じ、孤独を受け入れる
シャアは
「能力はあるが組織と長期的な関係を築けない」
という点があり、常に自分の理想を追い求めています。例えば、「スペースノイドの独立」や「ニュータイプの進化」という彼の思想は、どの組織に属してもブレることがありません。個人の理想や哲学を追い求める男なのです。
逆襲のシャア
旧ネオ・ジオン本拠地である小惑星アクシズを地球連邦政府との政治取引で入手したシャア・アズナブル率いる新生ネオ・ジオンは、これに地球汚染のための核兵器を満載させたムサカ級巡洋艦を係留させた上で質量弾とし、連邦政府首脳陣粛清の為、核の冬によって地球を人類の居住不可能な惑星にすることで強制的に人類の宇宙移住を加速させる為、地球へ壊滅的被害を与える本作戦を決行する。
自分の才能と理想を軸に行動しながらも、その結果として孤立することを恐れません。孤独を感じつつも、それを受け入れながら前進していく姿が印象的です。