オックスフォード大学の「THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?」によれば、人の目線に立って、できるだけ苦労せず、業務を効率化することにより職を奪う時限爆弾が意識されぬまま設置されております。「農学栄えて農業亡ぶ」パラドックスはここにもある。
コンピュータ化の確率に対する米2010年の職業雇用統計の職業分布、確率をLow、Medium、Highでカテゴリ分け。
※縦軸Employment:雇用、横軸Probability of Computerisation:コンピュータ化の確率
しかし現実には仕事は増えております。なぜならガートナーのHype Cycle for Emerging Technologiesが示すようにコンピューター化とは、ミクロ的には古い技術が消え新興技術が生み出されることの繰り返しです。つまり新たな仕事にとって変わるだけのことなのだと思います。
よって生き残るためには常に変化しつづけること、つまり農学もまた科学的な視点をもって、効率的に農業の生産性をあげ、同時代の工業同様に農業を大きな産業に育てようとしたところに、農業本来の固有性が失われていくように感じますが、農業と工業を跨ぐ学際的研究によってTransdisciplinaryが起こっていると感じます。
更に科学的視点は、工業のみに及ばず密接な関係がある地球温暖化や自然との共存が農業にとって必要な分野になったと感じます。こちらは高CO2濃度環境で「タカナリ」を栽培する場合のイネ・水田生態系の環境応答モデルを用いた研究です。
「農学栄えて農業亡ぶ」パラドックスの本質はクレイトン・クリステンセンによれば”既存の商品(農学)が優れた特色を持つがゆえに、その特色を改良することのみに目を奪われ、顧客の別の需要に目が届かない。”といったジレンマであり、変化を受け入れ続けることが解決に繋がると思います。
例えば日本農学会シンポジウム「持続的で豊かな生活を実現させるための農学の各分野でのブレイクスルーとなりうる取り組みを紹介し、農学研究や私たちの生活の未来について考えたい。」これ面白いと思います。