候補者のイメージは、有権者の認知バイアスに大きな影響を与えます。過去の実績やメディアでの報道によって、候補者の人物像があらかじめ固定化され、選挙戦が進む中での情報の受け止め方に偏りが生じやすくなります。これに対抗するには、新しい視点や独自のアプローチを使って既存のイメージを覆す「リフレーミング戦略」が有効です。
リフレーミングとは、セラピーや心理療法の分野で用いられていた概念で、認知や活動の枠組み(フレーム)が変わることによって、同じ出来事に対する人々の受け止め方や反応の仕方が新しいものへと生まれ変わることをいいます(バンドラー&グリンダー『リフレ-ミング』星和書店pp. ⅵ-ⅶ)。視点が変わり、状況の意味が変われば、人々の意識内容、すなわち人々が物事にどのような価値や意義を見いだすかは変わります。
Harvard Business Review 「弱みは強み」
また、地方選挙でも、メディアの報道姿勢が重要です。認知領域での情報戦としては、メディアの報道内容を通じて特定候補を支持する姿勢が見られる場合もあり、偏った報道や内容の切り取りなどで選挙戦に影響を与えることがあります。候補者はSNSやインターネットを通じて、直接有権者にメッセージを伝える戦略を取ることで、メディアのバイアスに対抗する手段を持つことが求められます。
【神戸経済ニュース】本当は最終報告が発表されてからと思っていたが、なかなか発表されないようなので8月23日に発表された「中間報告」を使ってまとめておきたい。死亡した兵庫県の元西播磨県民局長が斎藤元彦知事に対する「告発文」とされる文書を作成した問題(文書問題)に関する兵庫県議会・調査特別委員会(百条委員会)が実施した、職員アンケートの自由記述欄についてだ。アンケート結果を「証言」とするには違和感もあるが、「告発文」に書かれなかった内容を多くのテレビや新聞が「新証言」として報道していた。ここでは報道で取り上げられなかった記述で、気になったものを備忘録的に掲げておく。
神戸経済ニュース (取材メモ)報道されなかった「証言」たち 告発に違和感・うわさで作成可能?
近年、SNSやデジタルプラットフォームは選挙戦における重要な情報戦の場となっており、候補者自身や支持者が戦略的に情報を発信し、シェアやリツイートを通じて広範囲に影響を与えています。情報の内容だけでなく、その拡散速度やバズの起こし方も考慮し、感情的なメッセージや共感を呼ぶストーリーを意図的に活用することで、有権者の心理に訴える方法が取られています。選挙戦においてはフェイクニュースや誤情報も頻発することがあります。認知領域では、これらの情報に対して有権者がどのように反応するかが大きな影響を及ぼします。候補者陣営は迅速なファクトチェックや訂正情報の発信を行い、誤情報に対する防衛線を張ることが重要です。また、有権者も情報リテラシーを高め、信頼性の高い情報源を見極める必要があります
斎藤前兵庫県知事がパワハラをしていなかったとの主張が拡散していますが、【根拠不明】です。
— 日本ファクトチェックセンター(JFC) (@fact_check_jp) November 15, 2024
職員アンケートではパワハラを見聞きした人が4割を超え、本人は叱責したことを認め「必要な指導だと思っていたが、不快に思った人がいればお詫びしたい」と謝罪しています👇 https://t.co/eNl23l3vOJ
元西播磨県民局長の文書に書かれた内容と兵庫県の事実認定、斎藤元彦知事の説明
神戸新聞 – 斎藤知事批判文書問題 県「第三者調査は不要」 公益通報の結果待たず処分先行、公平性に疑問の声
文書に書かれた内容 県の事実認定 斎藤知事の説明 ひょうご震災記念21世紀機構の五百旗頭真理事長が退任する前に、青山幸副知事が面談して副理事長の解任を迫る。「その仕打ちが先生の命を縮めたことは明白」 面談は死亡の6日前。副理事長の退任の話は事実だが、退任後に継続する役職も話し合っており、「命を縮めた」という事実は認められない 外郭団体の任期や65歳以上の年齢など考慮し、適切な人事だった。「命を縮めた」とするのは科学的根拠のない誹謗中傷にあたる 知事選で、県職員4人に知事への投票を依頼する事前運動 選挙に関して違法な行為はなかった 私が職員に事前運動を求めたことはない 2月に斎藤知事が県内企業を訪れて次期知事選での投票を依頼 訪問の目的は当初予算案や若者支援施策の説明だった 当初予算案や若者支援施策の説明のためで、投票依頼はしていない 斎藤知事が産業労働部長に指示し、県内企業の製品サンプルをビールを手した 斎藤知事が産業労働部長に指示した事実はない 私は受領していない。当該企業の訪問時にも断り、秘書課にも受領しないよう指示した 斎藤知事の政治資金パーティーで、商工会議所などに補助金カットをちらつかせてパーティー券を大量購入させた 補助金減額は小規模事業者の減少に伴う課題で、パーティー券との関連はなかった パーティー券は副知事に対応を一任していたが、圧力をかけて大量購入させるような指示はしていない 優勝パレードについて、補助金増額して、企業協賛を得るようにクレクレさせた 事実ではない。補助金は前年度の半額になっている そのような指示をしたことはない 斎藤知事のパワハラは「指導の限界を超えている」 業務上必要な場合に厳しく指導することはあるが、相当な範囲を超える指導は確認できなかった 厳しく指導したことはあるが、業務上必要な範囲での指導。助言だった。県政をよくしたい思いがベースにある
デジタル技術の進展により、特定の層に合わせたメッセージをパーソナライズするマイクロターゲティングが可能になっています。選挙戦においては、有権者のデータをもとに個別の関心やニーズに応じた情報を提供することで、より効果的に支持を集める戦略が展開されます。これにより、異なる層に適切なメッセージを送り分けることで、支持基盤の拡大が期待できますが、一方で倫理的な側面やプライバシーの問題も指摘されています。
情報戦において、ボットアカウントを用いた意見の誘導や意図的な議論の活性化を行う手法も見られることがあります。大量のリツイートやコメントを通じて話題を人工的に操作することで、有権者に特定の印象を植え付けることが可能です。このような動きに対して、プラットフォーム側の対策と有権者のメディアリテラシーの強化が求められます。
#兵庫県知事選 斎藤元彦氏を支えたユーチューブ「勝手連」の援護射撃https://t.co/rgqnSTdTHc
— 毎日新聞 (@mainichi) November 18, 2024
両者のインスタグラムとXの公式アカウントのフォロワー数、ユーチューブのチャンネル登録者数は、斎藤氏がいずれも稲村氏を10倍以上、上回りました。
兵庫県知事選挙では、このような情報戦が多面的に展開され、候補者はこれらの情報操作や認知領域の影響を考慮し、戦略的に活用する事が求められていました。
このような認知領域を含めた情報戦に精通したアドバイザーが必要な時代になったと思います。