既存の枠組みをメタファーする事が、メタバースの領域

メタバースとは何か

ニール・スティヴンスンの空想した架空のサービスを、テクノロジーがカタチにしつつある状況です。一方で小説には描き切れてない点が多々あります。

クラークの三法則「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない」によれば、まだまだメタバースは、進化する余地が残されていると感じます。もしかすると10年後にはBMI(ブレイン・マシン・インターフェース)による、今とは全く異なるアプローチのメタバースが産まれているかも知れません。

Breakthrough Technology for the Brain : neuralink
国立研究開発法人科学技術振興機構ムーンショット型開発機事業 Internet of Brains

メタバースがどのようなものになるかについて、明確に定義することはなかった。「私は、メタバースがどうあるべきかということに関して、トップダウンの明確なアプローチを支持するつもりはありません。ボトムアップで可能な限り定義は無い方がいい。それは作者本人が決めることです。」

ニール・スティーヴンスン(Metaverse Standards Forum | Setting Course for an Open Metaverse Part 2: SIGGRAPH Building the Open Metaverse Course)

人々はメタバースがどうあるべきかそれぞれ違う定義で話しています。マーク・ザッカバーグの言うメタバースは数個のVRアプリさえあれば良いものです。様々な人が開発した資産や交流するアプリが、オープンブロックチェーン上にあるというアイデアもあります。・・・物理世界から完全に別の、インターネット上で日常を過ごすことができるというより哲学的なコンセプトもあります。

ヴィタリック・プリテン (Web3 Conference Tokyo より)

そもそもゲームはメタバースだった

1992年に米国のSF作家ニール・スティヴンスンの空想した架空のサービス「meta + universe」メタバース。任天堂は1983年にはゲームというジャンルで仮想的な世界を次々と生み出していました。つまり造語ができる前からハードウェアの制約の中で実現させていました。1993年にFPS(プレイヤーキャラクターの一人称視点)というジャンルを生み出したDOOMIPX/SPX通信でマルチプレイが可能でした。私も仲間とパソコンを持ち寄りDOOMやQuake、そしてWarCraftなどで遊んでおりました。27年前ですがメタバース(オンライン上でアバター等を使用して人々が活動できる仮想空間)のアイデアが実現可能なことは想定できていたと思います。

Doom (1993 video game)


1997年 Ultima Onlineを知った時に確証に変わりました。プロデューサーのリチャード・ギャリオットは世界で初めてメタバースを作ったと思います。20年ほど前はAmazonや楽天のネットショッピングが理解されていませんでしたが、今や人々の生活にインターネットが溶け込みメタバースの環境が整ったとさえ感じます。

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Ultima Online

過去にもサンフランシスコに本社を構えるリンデン・ラボが開発した「セカンドライフ」の商用サービスは、2003年6月に開始され、2006年にはユーザー数が196万人まで増えニュースになりました。

Second Life

まずは自動車がメタバースな乗り物になる

まずは自動車が単なる移動手段だけでなく、車内空間がミクスト・リアリティを用いて、バーチャル空間を楽しむ乗り物として見出され、ラストワンマイルまで顧客を届けるマーケティングツールになり得ると考えます。

新たな資本主義へ

ガートナーのアナリストはメタバースをハイプサイクルに2026年までに、人々の25%は、仕事、ショッピング、教育、ソーシャルやエンターテインメントなどに、1日1時間以上をメタバースで過ごすようになると予測しました。

「ベンダーはすでにユーザーがデジタル化された世界で生活を体験するための空間やサービスを構築しています。仮想クラスルームへの出席から、デジタル空間上の土地の購入、仮想住宅の建築に至るまで、これらの活動は現在、別々の環境で行われています。将来的には、さまざまなテクノロジやエクスペリエンスにまたがる単一の環境、すなわちメタバースの中で行われるようになるでしょう」

Gartner 2022年2月9日 プレスリリース

例えば2012年にリリースされた The Sandbox はメタバース内に作品を作ることが可能でした。2018年にはブロックチェーンで作品や土地を取引できるようになり、2019年に スクウェア・エニックスなどが201万ドルを投資2021年11月 ソフトバンク(SoftBank) が9300万ドル投資しました。

現状について、 The Sandbox で実際に売買されているメタバースの土地区画「LAND」の価格を OpenSea (NFTs) で確認しましたが一番安いもので、1区画が3.4ETH(現在のレートで 1,128,816円)です。2021年10月頃より累積で19,000件ほど取引が成立しております。

なおコインチェックと The Sandbox は2020年9月にパートナーシップを締結し、NFTマーケットプレイス「Coincheck NFT(β版)」でのLANDの販売など行ってきましたが、この度コインチェックが保有する「LAND」に「Oasis TOKYO」を制作するプロジェクトを開始しました。

コインチェックとThe Sandbox、メタバース上で都市開発を開始

直近では、2022年3月7日 The SandboxSHIBUYA109 エンターテインメントコーポレーションとビジネスアライアンスを締結し、SHIBUYA109をサンドボックスメタバースに導入することを発表しました。SHIBUYA109によると、現在は観光客が日本を訪れることが困難な状況であり、SHIBUYA109デパートを含む仮想的な渋谷区をサンドボックス内に作成することで、海外のユーザーを引き付け、観光客が東京の文化の一部を体験できるようにしたいと考えています。

The Sandbox Partners with SHIBUYA109.jpg
The Sandbox Partners with SHIBUYA109 to Launch “SHIBUYA109 LAND”

近年ではNFTによってメタバース上の土地や建物の売買も発達しており、更に金融工学を組み合わせた資産運用が高まると感じます。

分散型の非カストディ流動性プロトコル AAVEによるイールドファーミング

AAVE LIQUIDITY PROTOCOL

デリバティブ流動性プロトコル Synthetixによるイールドファーミング

THE DERIVATIVES LIQUIDITY PROTOCOL

NFTのレンディングプラットフォーム NFTfi

NFTfi – Borrow & lend on the leading NFT liquidity protocol

つまり、メタバース(国土)とNFT(通貨)によるトークンエコノミー(経済)によって新しい資本主義社会が生まれ、生産手段(工場・土地・機械など)を資本として私有する資本家が、自己の労働力以外に売るものを持たない労働者から労働力を商品として買い、それを上回る価値を持つ商品を生産して利潤を得る経済構造から、資本家の富を生み出す源が無形資産(芸術など知的財産)となる社会へと移行します。

株式会社U. | AR City ソラ水族館

AIはインフラとなりメタバースとなる

メタバースは仮想環境であるがゆえ接地問題を解決できるといった点で、AIを発達させやすいと思います。

GAFAに勝つのであれば、例えば ChatGPT を産んだGreg Brockmanのようなイノベーターだと思う。

ChatGPT: Optimizing Language Models for Dialogue

AIはインフラとして認知され、人々はAIを通して情報を得ることになり、検索エンジンを超えるサービスとして台頭する可能性がある。AIにインデックスされることが企業にとっても重要なものになるだろう。なお、このAIにAPIが公開され、多くの製品やサービスと連動することが期待されます。

AIに人格を持たせることができれば、もはや人間はAIとコミュニケーションすることに没頭し、精神の安らぎを得ることも可能になると思う。それがメタバースと呼ぶべき世界だと思う。

メタバースを実現する「手段」から、何を為すかといった「本質」について関心が移る

また、既存の枠組みをメタファーする事が、メタバースの領域であり、新たな文化や思想に可能性を感じております。メタバースを実現する「手段」から、何を為すかといった「本質」について関心が移ると思います。

2022年3月7日文化形成型NFTコミュニティは、コミュニティ史上初の代表性、包括性、すべての人の機会均等化を主張するためのWoW Foundationを立ち上げ、より多くの女性と多様な思考をNFTとメタバース空間にもたらす予定です。つまりメタバースであれば女性だけの世界を作ることも、アバターによって性別や人種のない世界を作ることも可能です。なお基金は、分散型Webスペースでの女性の表現を拡大することを使命として、The Sandboxからの2,500万ドルの助成金にて開始します。

このようなメタバースとNFTのプラットフォームが、The Sandboxの特徴です。今後は Meta (Facebook)が本格的にメタバース市場に参入する予定ですので、市場動向に注意が必要だと思います。

メタバースは、さまざまな理由から大きなチャンスです。ゲームや仕事を何時間もしている人もいれば、友達に挨拶したり、プロジェクトに協力するためにほんの1分間だけ参加する人もいるはずです。このようなプラットフォームの開発を支援することで、競合他社が私たちやコミュニティ、中小企業に課す多くの制約に制限されることなく、私たちや業界全体が最善と考える方法でこうした体験を構築する自由を手に入れることができるようになるのです。現在、私たちが直面している製品やビジネス上の制約を考えると、これらのプラットフォームを開発することで、数兆ドルとは言わないまでも、数千億ドルの資金を手にすることができると、今、さらに強く感じています。しかし、ソーシャル・プラットフォームやエンターテインメント、仕事、教育、商業など、私たちの生活のあらゆる場面でメタバースの重要性が高まるにつれ、私たちがこの構築で重要な役割を果たせたことに感謝するようになると確信しています。

次のマイルストーンは、ソーシャルメタバースのプラットフォームであるHorizonの継続的な拡張と、アバタープラットフォームの継続的な改善です。メタバースでの自己表現や交流のあり方、そしてそれにまつわるコマースは、私たちが最も注力している分野です。今年後半には、すべてのプラットフォームでアクセス可能なウェブ版Horizonを発表する予定です。また、アバターストアでは、有名ファッションブランドのデジタルウェアの販売を開始したばかりで、今後も品揃えを充実させ、アバターシステム全体の完成度を高めていく予定です。

ハードウェアの面では、今年の後半に「Project Cambria」をリリースする予定ですが、ここでの体験はかなり素晴らしいものになりつつあります。高解像度のカラー複合現実感を備えた、プロフェッショナルユーザーと仕事に特化したハイエンドなデバイスになる予定です。これが出るのが本当に楽しみです。これは長期的な道のりの中のひとつのマイルストーンに過ぎませんが、人々はこれに圧倒されることになると思います。

さて、以上が私が今もっとも力を入れている分野であり、今後数年、あるいはもっと長い期間にわたって、当社の製品とビジネスに最大の影響を及ぼすと思われるものです。このような時期は厳しいものですが、集中力と規律を高めることで、やがて私たちはより強くなれると思います。

Mark Zuckerberg 7月28日 6:27

メタバースからマルチバース(マルチメタバース)へ

メタバースは障がい者や健常者、国籍、人種、性別などの枠を超えて、ノーマライズな社会が実現できます。

人やモノの外見は、ミクストリアリティによって自分が見たいと思う外見に変えられ、言葉もAIを通して調整されリアルタイムにコミュニケーションを行えるようになります。

フィジカル空間にサイバー空間が完全に融合した状態をデジタルツインによって支えることができます。

これは自身の価値観に最適化されたプライベートなメタバースだと言えます。

やがて、このようなメタバースが同時並行に存在するマルチバース(マルチメタバース)な世界が到来すると考えます。

投稿者: 二本松 哲也

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