「医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル」について

青島 周一 (Syuichi Aoshima) さんの本「医療情報を見る、医療情報から見る エビデンスと向き合うための10のスキル」が届きました。

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この本は、医療情報や医学論文の読み方ではなく、人の認知バイアスがいかに脆弱なものかを理解し、人間を中心とした価値形成を深く洞察する力を養うものです。例えばP.コトラーの価値主導・人間中心のマーケティング3.0によれば経済取引には「使用価値」と「交換価値」があります。前者は、その商品の顧客にとっての有用性であり、「顧客の欲求を充たす、商品の性能」と考えられており。対して後者は、取引場面での相対的評価であって商品の性能とそれを得るために支払う対価によって決まります。よって価値形成において「使用価値」を前提とした顧客の欲求は、価値を認知することによって決定されます。

序文の一節 ”どれだけ質の高い情報があったとしても、その情報を解釈するのが人である限り、客観的、あるいは普遍的に「正しい情報」はこの世界に存在しない、そんな風にさえ思えます。”については、行動経済学のダニエル・カーネマンのプロスペクト理論で認知バイアスとして”人間は目の前に利益があると、利益が手に入らないというリスクの回避を優先し、損失を目の前にすると、損失そのものを回避しようとする”ことに通じています。

例えば 薬の効果が「どのような病気でも90%の確率で完全に治癒するが10%の確率で副作用により死亡する。」とした場合、インフルエンザと診断されても飲む人はいませんが、余命3ヶ月の末期がんであれば殆どの人は飲むと思います。しかし、糖尿病でしたらどうでしょうか?

つまり、エビデンスに基づく医師の判断が必ずしも患者にとって、最良ではない可能性を示唆しています。なぜなら、常に患者は合理的な判断をするわけではないからです。こうした物の見方が、行動経済として広く知られていますが、なぜか医療において語られる事が少なかったと感じます。現在、医療情報において誤った解釈がなされミスリードした例(タミフル問題、子宮頸がんワクチンなど)も散見されます。
この本を一人でも多くの方に読んで頂ければ、より良い医療に一歩でも近づけるものと感じます。

また、このように患者の認知が「使用価値」を決定しており、医師と患者との十分な情報を得た上で合意するためのインフォームドコンセントは、患者のニーズを解明し、価値形成のための哲学、戦略、仕組み、プロセスなどマーケティングにも通じるものだといえます。つまりこの本は価値形成におけるマーケティングのスキルとして捉えることも可能です。

投稿者: 二本松 哲也

志を持った人たちと、夢に向かって共に働くことが私の誇りです。 サイバーセキュリティコンサルタント、IPAセキュリティプレゼンター、OWASPメンバー、2020年度総務省事業 テレワークセキュリティ専門家 I キャリア(個人事業主 PG→SE→PL→PM→ システムコンサルティング事業部 部長)、資格(2級知的財産管理技能士、個人情報保護士)、IPCC 地球温暖化防止コミュニケーター