例えば、美味しさとは脳の認識に過ぎない。つまり脳の認識は、肘でチョンと突く(ナッジ)ぐらい簡単に騙すことや誘導することができる。美味しさといえば、味や匂い、見た目などあるが、それより先に先入観(お店の評判)によって脳に評価基準が作られ、見た目と味や匂いが一致しない場合の違和感、食べ慣れたものが好きになる(お袋の味)などもあるし、ブランドや価格によって美味しいはずと思い込んでしまうこともある。
つまり、脳に情報を与えると様々な反応があるため、意図した反応を得るために情報をコントロールする方法が存在する。これは行動心理学、社会心理学、脳科学などの最新の知見をマーケティングに活用して商業利用してブレグジットとアメリカのトランプ大統領誕生させた、ケンブリッジアナリティカ事件などがそれにあたる。
すなわちプライバシーとは私生活上の事柄をみだりに公開されない法的な保障と権利である。それは私生活を監視されず自由にできる保障でもある。しかし、ビッグデータ分析による行動パターンのプロファイリングとそれに基づいたナッジのような誘導手法によって、私生活上の事柄でさえも選択の自由を奪ってしまうだろう。
ただし、ナッジは全てが悪いわけではなく、自分自身にとってより良い選択ができるように人々を手助けすることを目的とする良いナッジと、賢い意思決定や向社会的行動を難しくするような悪いナッジこれをスラッジと呼ぶ。
この先、私達はナッジとスラッジを判断し、スラッジを抑制する仕組みが必要になると感じる。このため、プライバシーや選択の自由を守るためには、意図された影響や誘導がどのように設計され、どのような目的で使用されているのかに対する透明性を高める仕組みが必要となる。同時に、スラッジに該当するような有害な誘導手法を抑制する規制や倫理的基準が求められている。これらの対策を通じて、プライバシーや意思決定の自由が脅かされることなく、テクノロジーやデータがより良い選択のサポートに活用される社会を目指すことが必要だろう。