僕はテレビ報道を見ているとISIS(イシス)は人間の心を持たない残虐なだけのテロリストとしか伝わってこない。
悪しか持たないなんてリアリティーに欠けている。そもそもの目的とはなんだろう彼らについて知りたくなった。
第一次世界大戦によって西欧列強諸国が遺した傷跡とも呼ぶべきサイクス・ピコ協定。
民族の意志とは無関係に国家を分断されたオスマン帝国の悲劇は、更なる悲劇と混乱を生み出している。
1920年代イギリスの植民地となったムハンマド・アリー朝で西洋からの独立とイスラム文化の復興を掲げてハサン・アル=バンナー(Hassan al-Banna、1906年-1949年)によってムスリム同胞団が結成された。しかし1967年の第3次中東戦争において、アラブ諸国連合はユダヤ人国家のイスラエルに壊滅的な大敗を喫し、イスラーム第3の聖地エルサレムまでも失ってしまう。そして1970年からのサダト政権下で1954年以来非合法化され激しい弾圧を受けてきたイスラーム復興組織、ムスリム同胞団幹部の大量釈放に踏みきる。しかし1979年にキャンプ・デーヴイッド合意が成立し、サダトが対イスラエル単独和平路線を歩みはじめると、同胞団と政権との関係は急速に冷え込む。「イスラームの地」の侵略者、イスラエルとの和平は、同胞団にとっては神に対する責任放棄、敵前逃亡以外の何ものでもなかったからである。1981年10月、サダトはエジプトの「イスラーム集団」と連携したカイロのジハード団によって暗殺される。ついにイスラーム復興運動は、シャリーァ(イスラーム法)を通用しない為政者を「背教者」として断罪し、実力をもってでも排除しようとする急進派地下組織が台頭しはじめる。いわゆるイスラム原理主義者と呼ばれる人達である。
僕は、ここでようやく一つの結論に辿りついた。彼らを駆り立てるもの、それは異教徒に分断され聖地も奪われた祖国への思い、そこから転じた憎しみなのだろう。
一方で中東を訪問中の安倍晋三首相は1月18日(日本時間同日)、ヨルダンのアブドラ国王と会談し、過激派組織「イスラム国」の台頭に伴う難民対策などへの財政支援として、新たに1億ドル(約120億円)の円借款を表明している。安部首相は、人道支援としているが、この行動で反イスラムとしての立場は鮮明になった。
でも彼らのイデオロギーを理解できない僕達は、この行動についてイスラム復興を願う人達に説明できない。
テレビは生々しく、囚われた日本人を映している。僕は空になったグラスを流し台の方へ運んだ。